特別・企画展示

【終了しました】特別陳列 千束屋の歌舞伎衣裳とその意匠Ⅱ-立役衣裳に織り込まれた伊達と粋-

展示内容

 昨年に引き続き伊勢千束屋の歌舞伎衣裳類のうち、立役(男役)衣裳に織り込まれた伊達と粋の意匠を紹介いたします。
 歌舞伎衣裳独特の特徴と豪華さ、美意識の意味を、衣裳の色彩・生地・文様とその構成等から鑑賞していいただきたいと思います。


黒天鵞絨地卍繋雲形龍文様
繍 切付 肩衣・長袴(写真上)

 焦茶ビロード地に卍繋ぎの稲妻と紺色の雲に龍の丸文を配する。豪華な男伊達を象徴した肩衣と袴である。金糸をふんだんに使用した刺繍(繍)と切付(アップリケ)で、稲妻と雲竜の文様を構成しており、刺繍による雲竜の強さをしっかり受け止め、いっそう際だたせている。

黒地雲竜稲妻文様
繍 陣羽織(写真下)

 陣羽織は、武将が陣中で、鎧・具足の上に着用した上着である。主に袖無しに仕立て、絹や羅紗、ビロードなどの生地に刺繍や箔を施したり錦を用いるなど、重厚で武張った趣のあるものが多い。これは生地も文様も重厚なもので、或いは「一谷嫩軍記」の義経役が着用したのではなかろうか。


黒天鵞絨地雲飛龍文様
繍 切付 四天(写真上)

 黒の天鵞絨地に黒雲が空を覆い、夜の海は逆巻く波が立ち騒ぐ火焔をはく飛龍が四方を群れ飛ぶ、怪奇でいかにも恐ろしい光景の文様である。唐織(伊達)四天の文様には龍は定番であるが、羽を大きく広げた怪異な飛龍が群れ飛ぶ様は珍しい。龍の目と波は金属片を切り貼り付け銀色に塗られ、歌舞伎衣裳独特の特徴がいかんなく発揮されている。

浅葱平絹地濡燕文様(名古屋山三)
繍 切付 羽織・着付(写真下)

 浅葱色は突如降り出した夕立の色。思い思いの飛燕の姿は、切付と繍(刺繍)によるが、表現は写 実的で正確に表現している。それは雨の斜線の場合でも粗く自由であり、自然状態に近い感じを持たせる。歌舞伎定番の時代世話物「浮世柄比翼稲妻」の鞘当での名古屋山三郎の衣裳である。


赤地波兎文様  繍 切付 伊達下がり

 相撲とりの化粧廻しを小型にしたような形で、特に繻子や縮緬などの生地を使ったものを伊達下がりと呼ぶ。四天と組み合わされて用いられ、活発な動きにより、四天と伊達下がりの馬簾と呼ばれる飾りの房糸がともに散り効果 を高める「菅原伝授手習鑑」の梅王、松王や繻子奴と呼ばれる役が用いる。


展示品目

No. 名称 材質・形状 展示期間
I 様々な立役衣裳
1 黒天鵞絨地卍繋雲形龍文様 繍 切付 肩衣・長袴 前期
2 濃茶天鵞絨地雲に龍文様 繍 切付 羽織・着付 後期
3 紫繻子地梅鉢唐草文様 繍 小忌衣 前期
4 納戸熨斗目 着付・肩衣・長袴 後期
5 金茶繻子地格子文様 切付 着付 前期
6 白地飛鶴文様 描絵 素袍 前期
7 黒天鵞絨地鶴大紋 素袍 後期
8 鶸色繻珍立涌天龍首上文様 狩衣 後期
II 羽織・肩衣の文様
9 赤地雲立涌文様 繍 陣羽織 前期
10 黒地雲竜稲妻文様 繍 陣羽織 後期
11 柿茶地庵石畳に波丸文様 染 肩衣 前期
12 金茶地卍繋雲形獅子丸文様 繍 肩衣 後期
13 納戸地に赤地雲竜鳳凰文様 肩衣 前期
14 青緑地槌車文様 染 肩衣 後期
15 黒地松竹梅文様 染 肩衣 前期
16 赤茶地宝尽文様 染 肩衣 後期
III 四天の意匠
17 黒繻子地源氏車文様 四天 全期
18 黒別珍紺縞伏 四天 前期
19 黒天鵞絨地雲飛竜文様 繍 切付 四天 全期
20 焦茶金襴牡丹花菱毘沙門亀甲文様 四天 後期
IV 衣裳に表現される役柄
21 黒絹地雪持松竹文様(足利頼兼等) 繍・切付 羽織・着付 前期
22 浅葱平絹地濡燕文様(名古屋山三) 繍・切付 羽織・着付 後期
23 唐桟柄(幡随院長兵衛) 羽織・着付 前期
24 木綿雁木市松巴文様(太鼓持) 染 着付 後期
25 黒天鵞絨地鉄線唐草文様(四ツ目菱紋付)(佐々木盛綱) 繍 肩衣・長袴 前期
26 黒天鵞絨地段替り輪違い入り石畳文様(四ツ目菱紋付)(佐々木盛綱) 繍 切付 肩衣・着付・長袴 後期
27 浅葱千鳥散文様(庵木瓜紋付)(曾我十郎) 切付 肩衣・長袴 前期
28 浅葱蝶散文様(庵木瓜紋付)(曾我五郎) 切付 肩衣・長袴 後期
V 伊達下がりの文様
29 黒地波松文様 繍 伊達下がり 全期
30 赤地波兎文様 繍  切付 伊達下がり 全期
31 赤地飛雲梅桜文様 切付 伊達下がり 前期
32 赤地雲竜文様 切付 伊達下がり 後期
33 赤地獅子文様 繍 伊達下がり 前期
34 赤地梅桜菊花一引文様 繍 切付 伊達下がり 後期
VI 関連資料(参考)
35 役者絵・芝居絵    
36 伊勢歌舞伎浄瑠璃年代記    
37 衣裳等の台帳類    
38 千束屋の引札    

 

展示期間:  全期 (平成16年11月27日~同17年3月26日)
前期 (平成16年11月27日~同17年1月31日)
後期 (平成17年 2月 3日~同17年3月26日)